淵神社(長崎市淵町)は、年始の参拝者向けに「福」にちなんだ縁起物3点を用意した。
同神社が用意したのは「福矢」「福絵馬」「福手拭い」など、福にちなんだ縁起物。
これらの縁起物を製作したきっかけは今年2月、同神社に福島から一人の男性が参拝に来たことだという。
「妻が福山雅治さんのファンなので、妻へのお土産に」と、その男性は同神社で人気の「福守り」を買い求めた。ところが1カ月も経たない3月中旬に男性は再び神社を訪れたという。
同神社禰宜(ねぎ)の下條一仁さんは男性に「私を覚えていますか」と声を掛けられた。
3月11日の東日本大震災で男性の自宅は住めない状態になり生活できなくなったため、一家は着のみ着のままで大分県にある妻の実家に避難することになった。一家の主(あるじ)として嘆き悲しみ不安に襲われる家族を何とか勇気づけたいと思った男性は、車に家族を乗せて九州へ向かいながらあることを思い立った。
「よし。みんなで淵神社に参拝して元気をもらおう」と長崎へ向かったという。
「みなさん、本当に着のみ着のままという言葉通りの姿で、私は声が出せなかった」と話す下條さん。参拝を終え、少しだけ笑顔を取り戻した一家を見送りながら、下條さんたちは何か自分たちに出来ることはないかと考え、同神社や運営する宝珠幼稚園から被災地へ義援金を送った。
しかし、それだけでは何か足りないのではないかと思った下條さんは「『福守り』であれだけ喜んでもらえるなら、お金ではなく人の気持ちをもっと明るくするために何か作れないか」と思い立ったという。
下條さんは「絵馬なら積極的に前向きな言葉が書けるのでは」と福絵馬を考案。
「伊勢神宮にも福矢があるが、この矢が的心(てきしん。的の中心のこと)を射抜いていれば縁起がいい」とオリジナルの福矢も考案した。
先月リニューアルしたロープウェイのオープニングセレモニーの際に赤で染めたものを配った「福手拭い」。
今回は同じデザインを桜色で染めたものを用意した。ロープウェイの出発駅は同神社の境内にある。
「『福手拭い』のリクエストを多方面からもらったので、今回は桜色を用意した。
どれも一つひとつ手作りで作っていただいているので数は限られるが、大震災や不況など気持ちが暗くなりがちな世の中に来年は少しでも『福』がやってくれば」と下條さん。
初穂料は、福矢 = 1,000円、福手拭い = 700円、福絵馬 = 500円。
長崎・淵神社が「福矢」「福絵馬」「福手拭い」-年始の参拝者向けに
長崎経済新聞